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2017,04,27
コラム

「リーダーのためのリーダーシップ」の終焉

「スポーツマンシップは、スポーツマンのためにある」。
これはあまり異議がないでしょう。

では「リーダーシップは、リーダーのためにある」
これはどうでしょうか? Yesですか? それともNoですか?

 

実は、昔は、圧倒的にYesという答えが「常識」でした。
リーダーシップに関する研究は、英雄やヒーローにはじまり、
政治家や経営者といった文字通りの「リーダー(人々を導く人)」を対象にしていました。

そして、今日、実はNoという答えが主流になりつつあります。
「リーダーのため(だけ)のリーダーシップ」が終わりを迎えつつあるのです。

 

この理由は明確で「リーダー一人で勝てる時代」が終わりを迎えているからです。
その背景には大きく3つの変化があります。

 

第一に、判断や意思決定に求められるスピードが加速し、複雑性が増しています。
リーダー一人にあらゆる情報を集約して、判断をして、その決定を現場に落としていく、ということに時間をかけている間に、競合が現場で判断をして動いてしまうと、二歩も三歩も遅れを取ります。
トップダウンが強いように見える軍隊ですら、
現場での判断を支援する教育やツールやシステムを積極的に導入しています。
最近では「PDCA」ではなく「OODA(ウーダ:観察→選択肢検討→決定→行動、というスピードと判断を重視するフレームワーク)」という考え方にシフトしているのが象徴的です。

 

第二に、顧客のニーズが多様化しています。
リーダー一人では、多様なニーズへの理解と対応が追い付かないのです。
日本人の経営者では、北米のニーズ、アジアのニーズ、アフリカのニーズを
それぞれに深く捉えるのは限界があるかもしれません。
あるいは日本のマーケットであったとしても、男性と女性、シニアと若者、等のように細分化していくと一人の経営者やリーダーが、全てのニーズを理解し対応するのは難しいのです。
ましてや、最近は「モノ消費からコト消費」へ転換していると言われるように、
ニーズも読みづらくなっているといわれます。

 

第三に、技術革新のレベルです。
「半導体の集積率は18か月で2倍になる」 というムーアの法則を引用するまでもなく
技術革新のレベルもスピードも桁違いになっています。
AI、ビッグデータ、IOT、インダストリー4.0、自動運転、3Dプリンター等のコトバを目にしない日はなく、書店の店頭を賑わせています。
これらの技術革新の事象の本質は 「主人公が増える」 ということです。
例えば、3Dプリンターを例にとれば、普通の人一人一人が、自宅やオフィスで、
自分が必要としているものをつくれます。
これまでは、いくつかのメーカーの製品の中から選ぶ、という行為だったものが、
全員がユーザーであり買い手でありながら、同時に作り手にもなれるのです。
判断に必要なデータも、AIやビッグデータを活用して、簡単に高い精度の情報を得られます。
主人公が激増する時代に、一人のリーダーの下で物事を進める必要がなくなるのです。

 

こういった3つの変化が 「リーダーのためのリーダーシップ」 に終わりを告げているのです。

では皆さんが 「リーダーシップ」 の主人公ですよ、と言われるとどうでしょうか?
リーダーシップを学び、トレーニングをするチャンスは、これまでにありましたか?

リーダーシップ開発の権威であるJ.ゼンガー博士が、
全世界の企業のマネジャー約3万人に調査したところ、
リーダーシップのトレーニングを初めて受けた年齢の平均は42歳でした。
「これではあまりにも遅すぎる。リーダーシップを高めるのに、早くて早すぎることはない」。
ゼンガー博士はそのようなメッセージで論文を締め括っています。
東京都の都立高校にも、2016年からリーダーシップが 「必履修科目」 として導入されています。
これも「リーダーのためのリーダーシップ」が終わりを告げている分かりやすいニュースでした。

 

皆さんがリーダーであろうがなかろうが、
リーダーシップへの理解を深めて高めるきっかけとなれば幸いです。



副所長 田中 大裕




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