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2016,06,10
コラム

リーダーシップとストレスの脳科学的な考え方

昨今の人事・組織部門のメイントピックの一つに、
メンタルヘルスやストレスマネジメントが挙げられます。
前提としてストレスやプレッシャーをいかに減らすか、
あるいは職場としていかに軽減できるか、という文脈で語られています。


ところで、別の機会に、リーダーシップとは選択である、
従って日々鍛えることができる、という趣旨のお話をしました。
リーダーシップと選択


もしリーダーシップの本質が選択であり、すなわち何かを捨てる、
ということであれば、相当なストレスやプレッシャーが発生するでしょう。
選択する、あるいは捨てる、ということは特定の人からの強烈な反対を
受けるリスクがありますし、選択した結果が上手くいく保証もありません。


ところが、注目すべきことに、ビジネスパーソンの中でも最も
選択=意志決定のストレスやプレッシャーにさらされているはずの経営者の顔が
イキイキしていないのかと言うと、会社で一番エネルギッシュだったりします。


逆に、客観的には最もストレスとプレッシャーが少ないはずの若手社員の顔が、
むしろ経営者やマネジャーよりも疲弊感を漂わせていることもあります。


言い換えれば、よりリーダーシップをとっている人が、
よりストレスを感じるのか、結果として疲弊するのか、
と言うと「そうではない」ということです。


この点については、近年の脳科学等の発達によって説明がつきやすくなってきました。
ここでは日本でもベストセラーとなった『スタンフォードの自分を変える教室』の
著者である Kelly McGonigal の論を紹介しましょう。


彼女に依れば、ストレスそのものは人間にとって悪いものではない
ことが分かってきています。


具体的には、一例として、アメリカで3万人を対象に8年間の追跡調査を行った結果を
紹介しながら、ストレスが人間に害を及ぼすのは、その人がストレスを悪いものと
捉えている場合に限られていると言います。
逆に言えば、ストレスが自分にとって有用なものと捉えている人にとっては、
むしろ体や臓器にプラスの働きをするのです。


実は、研修でもグループやクラスのリーダーをお願いすると、
多くの方が「えー、リーダーなんて」といかにもリーダーが
ストレスフルであるという反応をされます。


社会的にも若手ビジネスパーソン、
とりわけ女性の管理職=リーダーへの昇任意欲の低さが問題視されています。
その理由の一つに、管理職は責任ばかりが増えて大変そう、
というイメージが挙げられています。


しかし、McGonigalの研究を参照すれば、
むしろ「リーダーシップの発揮=ストレスフルでしんどいこと」という捉え方自体が
人のエネルギーを奪ったり、場合によっては健康そのものを害したりする、
という構図が浮かび上がってきます。


逆に言えば、リーダーシップを発揮する当人は、
リーダーシップの発揮やそれに伴う心理的な負荷を自分にとって有用なものと
捉える事が重要である、という示唆が得られます。
また、リーダーシップ開発を支援する人にとっては、そのようなリーダーシップ
のとらえ方を広めていくことが有益である、というヒントが得られます。


そうであるならばリーダーシップを高めるには
「どのような能力・スキルを磨くのか」というHow論からではなく
「何のためにリーダーシップを発揮するのか?(Leadership for what?)」
というWhy論から考えるべきだ、ということになります。


先述のMcGonigal 氏は、つながりや助け合いのために時間を割くと、
オキシトシンというホルモンが分泌されて、辛いストレスによる心臓や血管への
ダメージの回復を助ける、という研究結果も紹介しています。


「何のためにリーダーシップを発揮するのか?(Leadership for what?)」
という目的を考える際に「自分以外の誰かのため」という利他的な側面で
考えられると、
リーダーシップの発揮が促されやすい、と言えます。


あなたは何のためにリーダーシップ発揮しますか?
周りにいる人は、何のためにリーダーシップを発揮しているのでしょうか?


田中 大裕




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4つの問題意識
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記事カテゴリー リーダーシップという概念の正体 リーダーシップの種類 リーダーシップに対する誤解 リーダーシップが発揮された事例