TOP  >  リーダーシップに対する誤解  >  日本人はリーダーシップが苦手?
2017,05,12
コラム

日本人はリーダーシップが苦手?

「日本人は、リーダーシップが苦手だ」

「日本人には、リーダーシップは向いていない」

という話をよく耳にします。

 

今回は、様々な日本人論の源流となっている『菊と刀』をベースに、

「日本人はリーダーシップが苦手」と言われる理由を探ります。

 

『菊と刀』を書いたアメリカの文化人類学者・R.ベネディクトは

次のような例を挙げて、日本人にはある特徴が存在すると説いています。

 

「食べろ」とか「すわれ」とか告げるとき、相手と親しい関係にあるのか、

あるいは相手が目上か目下かに応じて言葉遣いが変わる。

二人称の代名詞も、「あなた」「君」「おまえ」など、

その場にふさわしいものを使わなければならない。

 

たしかに、企業の新入社員研修のカリキュラムでも、企業人になる入口として

敬語を中心とした言葉遣いの重要性は必ず教え込まれる項目の一つです。

 

また、名刺交換から食事の際の乾杯のグラスの位置まで全て、

相手との上下関係を意識して、ベストな行動を選択する必要があります。

 

さらに、企業の中でなくとも、例えば結婚式などの挨拶の常套句にも

「人生の大先輩の皆様を前にして大変恐縮ですが、

僭越ながら、一言ご挨拶させて頂きます・・・」

と会場の参加者と自分との関係性を踏まえた言葉が使われます。

 

このような特徴を、ベネディクトは次の言葉で表現しました。

 「応分(おうぶん)の場を占める」

 

少し硬い表現ですが「分相応(ぶんそうおう)」という言葉もあるように

自分のポジションや位置づけにふさわしい振る舞いや言動をしようとすることを指します。

 

「自分は年下だから、一言、エクスキューズを入れよう」

「自分は、顧客から見て営業する側だから、自分の名刺は下だな」

 

この「応分の場を占める」という特徴は、リーダーシップとどう関係するでしょうか?

答えは 「空気を読み過ぎて、枠を超えられない」ということです。

 

「自分はまだ若手だから、発言を控えよう」

「相手はお客様だから、ここは引いておこう」

 

このように自分のポジショニングを意識し過ぎて

一歩が踏み出せなくなると、リーダーシップは発揮されづらくなります。

 

では、このことを以て「日本人は、リーダーシップが苦手だ」という話に

賛同すべきかと言うと、そうとは言い切れません。

 

リーダーシップは「目的に向けて、人を動かす力」ですから

対人関係スキルという側面が強くあります。

 

ベネディクトが指摘したことが正しいとすると

日本人は対人関係力、特に対人感受性が高い、という特徴があるとも言えるのです。

 

ある有名な比較文化論の研究で、日本は諸外国と比較して「ハイコンテクスト文化」である、つまり「行間」を大切にしたコミュニケーションをする文化である、

という話を聞かれたことがある方も多いでしょう。

 

人を動かすためには、対人関係力、とりわけ対人感受性は非常に重要であり、

日本人はその力に長けているのです。

 

「日本人はリーダーシップが苦手だ」という話は

『菊と刀』をヒントにすると、正しいとも言えるが、違うとも言えるのです。

 

逆に言えば、日本でリーダーシップ開発に携わる方には

この日本人の高い対人感受性や対人関係能力をどのようにして強みに変えるのか?

という問いに答えられる必要があるのです。

 

 

Leadership Readiness Lab.

副所長 田中大裕



コンセプト
4つの問題意識
メルマガ
グローバルリーダーシップ研究所
記事カテゴリー リーダーシップという概念の正体 リーダーシップの種類 リーダーシップに対する誤解 リーダーシップが発揮された事例 ニュース