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2016,05,11
コラム

リーダーシップと選択

リーダーシップに関する研究、あるいは議論は3つに大別できるでしょう。


1つ目はリーダーシップとはどのような能力なのか、
どのようにすると高められるのかという「How」論です。
これまでにも数々のコンピテンシーリストが提示されてきました。


2つ目は、リーダーシップとは何か、定義は何かという「What」論です。
例えばJ. P. Kotterがマネジメントとの対比において定義した"prduces change and movement" (変革を促進する)は著名なWhat論の一つとして挙げられます。


3つ目は、何のためにリーダーシップが求められるのか? という「Why」論です。
リーダーシップは、ないよりはあった方が良い、という点で必要性が自明のことのように思われがちです。


実際、なぜ必要なのか、何のために発揮するのか、ということについて
論じられることは以外に少ないのです。


この「Why」論について、明示されていない暗黙の前提を推察すると、
以下の2つのパターンが見られます。すなわち
①企業には変革が必要であり、変革するため
②組織は人心を結束させて行動する必要があるため
というものです。


前者は戦略やイノベーションの文脈で、
後者はマネジメントやダイバーシティの文脈で語られることが多いです。


さらに上記の①②の文脈を辿っていくと、
共通することとして「選択」というキーワードが浮かびます。


まず①の文脈から見て、変革を推進するに際しては選択(と集中)が必要です。
例えば、今日のGEの成功は1981年にCEOに就任したJ.Welch による選択と集中
の戦略の徹底した遂行に基づいていることは周知の事実です。
そして J.Welch が4Eリーダーシップというフレームを通じて
GEのリーダーシップ教育に心血を注いだこともご存知のことでしょう。


また②の文脈から見て、人心を結束させてパフォーマンスを最大化する
ためには、どの山に登るのかを選択してメンバーに提示する必要があります。
そうしないと、異なる経験と価値観と役割を持ったメンバーが目指す地点が
ばらばらになり、そのような烏合の衆では組織のパフォーマンスが最大化
されないことは言うまでもありません。


さらに「選択」というキーワードに着目すると「選ぶ-捨てる」という対の概念
によって成り立っていることが分かります。
例えば、市場で1位と2位になりうる事業に注力することは、3位以下にしかなれない
事業を捨てる(売却する、あるいは止める)という選択をすることになります。
あるいはAという山に登ることは、反対側にあるBという山には登らない、
という選択をすることになります。


では、このように「選択」すなわち「選ぶ-捨てる」という角度から
リーダーシップをとらえることの意義は何でしょうか?


それは、我々が日々にリーダーシップを磨くトレーニングを積むことができる
ということに尽きるでしょう。


例えば、ある会議への出席依頼を受け取ったとします。
いつもならルーティンで予定を確保するところですが、改めて目的や意義を
考えて出席するかしないかを選択してみます。
その際に大切なことは、その時間で出来る他のことと比較しながら
「何を捨てているか?」を自覚することです。


一つの会議に出席することは、重要な企画書を1本作成する時間、
あるいは部下や同僚とのコミュニケーションの時間等々を
「捨てる」という「選択」をしているはずです。


有名なところでは P.F.Drucker が劣後順位の重要性を説くことを通じて、
時間という資源を何に割くのかという選択こそが成果を左右することを
強調しています。


受け取ったメール1通に返信するかどうか?誰とランチをとるか?も全て選択です。


「Aを選び、Bを捨てる理由は何か?」という問いを自らに立てて答えるという選択
のプロセスを繰り返すことを通じて、選択としてのリーダーシップが磨かれるのです。


しかも、管理職のような権限がない若手の頃から、
今すぐに磨き続けることができます。


今日、あなたは何を選び、何を捨てるでしょうか?
その理由は何でしょうか?



田中 大裕




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