新入社員や、4月1日付の異動で若手社員を迎える職場も多いこの時期、2つほどリーダーシップに関するキーワードをおさらいしておきましょう。
1つ目のキーワードは「リバースメンタリング(reverse mentoring)」。
5年ほど前からよく聞かれるこのキーワードは、デジタルネイティブと呼ばれる今の若い世代に学ぶことがあってもいいのではないか?という着想から来ています。
「上の世代が若い人をメンタリングする」という発想を逆転(reverse)させて「若い人が、上の世代の方をメンタリングする」という発想です。
これには、単に上の世代が学ぶ、という効用以上に、若い世代の「居場所づくり」という効用があります。
現代のリーダーの重要な役割の一つに「安全・安心な場づくり」があることは、もはや自明のこととされつつありますが、リバースメンタリングはそのための有効な手段となっています。
多くの日本企業では「新人の君には、ぜひ新たな風を吹き込んでくれることを期待しているよ」と漠とした期待を伝えつつ、実際には電話の取り方から敬語までを指導して職場に順応させることばかり指導することも少なくありません。
もちろん覚えるべきことは覚えてもらいつつ、むしろ新入社員が会社や職場の先輩方に還元できるものを見つけて、早くからしっかりと存在価値を発揮してもらう、という発想があってもよいでしょう。
2つ目のキーワードは「共有型リーダーシップ(shared leadership)」です。
これも5年ほど前から聞かれるようになったキーワードです。
一人の優れたリーダーがチームを牽引するのではなく、多様な強みを持ったメンバーが相互に(shared)リーダーシップを発揮する、という考え方です。
有名な例ではソニーにおける井深さんと盛田さん、ホンダにおける本田さんと藤沢さん等が挙げられます。
皆さんの周りにも「誰か一人がスゴいわけではないのに、いつも雰囲気が良くて高い成果を出してくるチーム」がありませんか?もしあれば、そのチームではリーダーシップが共有されている可能性があります。
ビジネスの現場の変化のスピードが加速している現代の環境では、トップがすべてを指示命令で回すことは効率も効果も落ちてしまう。
現場のメンバー一人一人が考えて、人を動かし、成果へと導いていく方が、現実的である。
そう考えると、実はshared leadership という考え方は、理想論というよりは、変化の方向性として必然とすら言えるでしょう。
但し、実現に向けては、自由闊達な雰囲気づくり、一人一人が判断して動ける権限移譲、そして失敗ばかり取り上げる減点主義のマネジメントを手放す、といったなかなか勇気がいるマネジメントやリーダーシップが求められます。
「最高のリーダーシップとは、他者のリーダーシップを引き出すリーダーシップである」
日本の各職場で、若い方々のリーダーシップが引き出されていくことを願いたいと思います。
副所長 田中 大裕