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2016,07,19
対談

元・富士フィルム常務執行役員が考えるリーダーシップとは?

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部下育成の秘訣は「個性を見つけて伸ばす」こと

田中: 大企業で組織や人をリードされてきたことに非常に興味があります。

池上:

自分自身のことを考えると恥ずかしくなり話せなくなるので、自分自身のことをさて置いてお話しさせて下さい。当てはまるかどうかはわからないですけど、ざっくり言うと、日本はモールド(鋳型)教育。同じタイプの人間を作る、という大きな流れがあると思います。
だから、すごくユニークな個性をもった子が学校で生活しにくいという話をよく聞きますよね。その人の特徴を伸ばすことより、欠点を直すことに注力する。そうではなく、まずは人それぞれの個性を見て、個性を引き出すことが必要だと思います。

そして、上司の役割は徹底的に褒めてやること。「あ、自分にはこんな強みがあるんだ」と気づかせてあげることだと思います。欠点があっても、その人なりの個性はあるんですよね。そこにスイッチを入れてあげることが大切です。


田中:

「褒める」という行為は、とても難しいと思っています。
私なりの解釈ですが、上司がしっかり「一人ひとりの個性を見つけてあげる」というニュアンスが近いのではないかと思いました。とにかく、何でもかんでも褒めればいいということではないかなと思います。


池上:

そうだと思います。最近、法隆寺の宮大工棟梁の西岡常一さんの著書「木のいのち、木の心」を友人が紹介してくれました。西岡さんの言葉で、すごく印象的だったのは、「木を組む前に人を組め」という言葉。
宮大工のような職人って個性的な人が多いですよね。その人達とチームで仕事するということは、個性を生かして良いチームを作れということ。それが棟梁の仕事であると。それができたら棟梁は何もしなくていい。


もう一つ印象的だったのは、使う材料全てに個性があるということ
癖や個性を生かして組み合わせていくのがポイントだと。いい建物を作るためには、一つの山の木、生えている場所で全く個性が違うから、いい組み合わせを探せ、みたいなことが書いてありました。

ただ、言うのはやさしいですが、やるのは難しい。そういうことが頭の中にあるだけで、皆さんの仕事の設計の仕方も変わるのかなと思い紹介しました。


田中: なるほど。例えばマネジャーがメンバーの個性を生かそうとしたら、まずは自分自身の個性やアイデンティティをしっかり理解することが必要かなと思っています。
何故なら、自分のアイデンティティが分かっていれば、部下のアイデンティティも認めて、生かしたいと思うと思いますし、自分のアイデンティティに気がついていなければ、部下の個性もなかなか見つけ出せないと思います。

池上:

多くの上司は、「I am OK. You  are not OK.」の立場で部下に語りかける。上司の気持ちとしては「このポジションにいるのだから、自分は優れている。お前たちはだらしない」このような構図では良い効果を生まないですよね。
「自分も一人の人間として、まだまだ至らないところがいっぱいだ。でもこんな特徴もある」という立場で部下と接することができる人は素敵だと思います。

「自分はここを改善していきたいし、君にはこうしてほしい」という前置きがあっての話だと説得力が増しますよね。部下は上司の姿勢を結構見ていますから。この人は、「自分のことを分かってくれてる」と思えれば、信頼関係は放っておいても上がります。


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田中:

そういうことができる上司と、できない上司は、何が違うのでしょうか?
働くことで自分を研鑽したい人は、「自分にはまだ足らないところがある」というようなワードが出てくると思いますが、一方で、楽をしたいと考えていたり、与えられた目標を達成しなければと、視野が狭くなってしまっている人が後者のパターンに陥りやすのかなと思っています。


池上: 仰る通りですね。短い言葉に置き換えたら、「本当に腹の据わった人間ですか?」ということです。弱い人間ほど強く見せたがるものですから。



リーダーシップとは、「生きる力」

田中:

我々が探求しているテーマである「リーダーシップ」についてですが、
池上さんは、「リーダーシップとは何か?」と問われたら、何とお答えになりますか?


池上:

リーダーシップに関わる要素はたくさんあると思います。これが正しいという答えはないと思いますが、その中でも、私は「人間力」という言葉を結びつけますね。「人間力」という言葉もわかったような、わからないような話ですけど。私が考える「人間力」とは何かというと、「生きる力」です。


リーダーシップは、旗を振って勇ましくみんなを引っ張っていくイメージもあるかもしれないけれど、それはたくさんある中の一側面にすぎない。
リーダーシップは二つに分類できると思っています。

一つ目は、自分自身に対するリーダーシップ。
二つ目は、他の人に対するリーダーシップ。


自分自身に対するリーダーシップは、何となくわかりますよね?若手社員でも磨くことができるし、子供の時から磨くこともできる。自分自身と対話することを通じて、自分はこういう風にやっていこうとか、自分はこういう特徴があるから、そこを伸ばしていこうとか。自分で決めて実行に移していくことが、リーダーシップの定義にハマる気がしますがどうでしょうか?


田中:

はい、まさにその通りだと思います。


池上:

自分自身へのリーダーシップを磨いた上で、他の人へのリーダーシップが議論されるべきかなと。よくあるのは、自分に甘くて部下には厳しい上司。こういう人には「自分に対するリーダーシップを磨いてきたの?」と聞きたくなりますよね。「トップからの指示だから、これを達成しなければいけない」これだけでは、リーダーシップがあるとは言えません。


田中:

リーダーシップとは「人間力」だというお考えは力強いなと思います。最後、もう一つだけ質問をさせてください。「人間力」=「生きる力」であるとした場合、「生きる」というのは何なのか?言葉尻を取れば生活できるだけでも「生きる」と言えるし、リーダーシップがなくても、生きてはいけるなと。意図は違うところにあると思ったのです。


池上:

「生きる」とは何なのか、すごく大事ですよね。「生きる力」とは、自己実現という言葉ともつながりますし、人生のフェーズごとに、違ってくると思います。困難を克服する力も生きる力であり、それはどんなフェーズであっても共通する力だと思います。また、やはり「人が好き」という事も大事なポイントかもしれません。人は、一人では生きていけませんし、人が好きだと、みんなが色々と助けてくれますね。


田中:

「人が好き」というので今日の話は全てつながったなと感じました。
「個性を見つける」「生きる力」「人間力」全てが繋がっているのだと感じました。働くという視点から見た時、「生きる力」とは何なのかを、さらに探求していきたいと思います。本日は長時間、ありがとうございました。



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対談を終えて・・・

今回、池上さんのお話をお伺いしながら、組織や人をリードする際に、まず必要なのは自分自身に対するリーダーシップであること。自身の個性やアイデンティティを理解した上で、周りの人や部下の個性を見つけ伸ばすことが大切であると感じました。また、これからどんなに技術が進化しても、「人間力」や「生きる力」、すなわちリーダーシップは、いつの時代も問われ、磨き続けていく必要があると感じます。






コンセプト
4つの問題意識
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記事カテゴリー リーダーシップという概念の正体 リーダーシップの種類 リーダーシップに対する誤解 リーダーシップが発揮された事例